中古車売買の実績を生かして自治体とのつながりを強化~株式会社IDOM~
【画像】株式会社IDOM 池ノ谷さん
中古車の販売・買取を行う「Gulliver(ガリバー、以下ガリバー)」ブランドで知られる株式会社IDOM(いどむ、以下IDOM)は、2025年2月に全国16自治体に対し、環境配慮型車両(またはエコカー)70台の寄付を行いました。寄付先の選定に当たっては、IDOMが進めている脱炭素への取り組みをテーマに、地域課題の解決につながる自治体を選んだといいます。寄付の背景から実施に至るまでの経緯や思いを、担当者にお聞きしました。
新規事業の模索から見いだした官民連携
今回お話を伺ったのは、IDOMで新規事業開発チームを任されている池ノ谷さん。新たな事業を模索する過程で出てきたキーワードが社会課題の解決と官民連携だったといいます。
「IDOMの主要ブランドであるガリバーでは、年間30万台以上の中古車を扱っており、店舗は主にロードサイドにあります。地域の方々に頼られる店舗を目指すなかで、車を通した社会貢献を模索しており、自治体とのヒアリングで出合ったのが企業版ふるさと納税です」と池ノ谷さんは振り返ります。
寄付に当たっては、自治体が使用する自動車を寄付することとし、IDOMが取り組んでいる「脱炭素社会の実現」を寄付先の選定のためのテーマとしました。「自治体で使われている自動車は古いものも多く、燃費の悪い古い自動車を使わざるを得ないという事例が多く見受けられます。そうした自動車を我々が寄付する自動車に置き換えていただくことで、燃料費の節約だけでなく二酸化炭素の削減にもつなげたいというのが狙いでした」
【画像】千葉県野田市の車両贈呈式の様子
公募によりIDOMの理念に合致する16自治体を選定
企業版ふるさと納税を活用した寄付を実施するに当たり、2024年10月にプロジェクトチームを発足。「チームには、財務や在庫管理などから5名が参加しました。11月には自治体に向けて公募を行い、12月にかけて寄付先を絞り込んでいきました」と話す池ノ谷さん。
公募にあたっては、地域課題解決プラットフォームのriverを活用して、IDOMが取り組む脱炭素への思いを発信。応募した50弱の自治体と面談を重ね、最終的に16自治体に絞り込んだといいます。「解決すべき社会課題の要素を脱炭素に特化し、年式の古いガソリン車を使用している自治体に絞らせていただきました。じっくりと寄付先を選定することができ、最小限の企業負担で最大限の社会貢献ができたのではと感じています」
寄付の詳細が固まったところで別のチームを立ち上げ、期日までに納車することに全力を注いだとのこと。「この段階で担当販売店と自治体とのつながりができました。寄付後の感謝状の贈呈式などは店舗ごとに行い、ストアマネージャー(支店長)が出席しています」
【画像】福岡県宇美町の感謝状贈呈式
寄付後の自治体との関係性に大きな手ごたえ
池ノ谷さんは、今回の寄付を通じて、社会貢献以外に大きな手ごたえを感じているといいます。
「自治体の担当者にガリバーという名前を知っていただけたことは大きなベネフィットでした。ガリバーでは、中古車売買の経験を生かした地域貢献を模索していますが、交通安全講習の依頼をいただいたほか、ご高齢の方の移動という社会課題の解決に向けた相談をいただいたこともありました。自治体に協力する取り組みが始まりつつあります」
これまで、官民連携には大きなハードルがあったという池ノ谷さんですが、今回の取り組みで一歩先に進めたといいます。「自治体がガリバーに興味をもってくれたことで、官民連携の事業が広がりそうな手ごたえを感じています。ガリバーが目指す地域密着への大きな足がかりになったのではないでしょうか」
【画像】店舗に併設された整備工場
販売後のアフターケアも。地域に頼られる「まちのクルマ屋」を目指す
同社が進めている取り組みのひとつが、地域社会への貢献です。単に自動車を売買するだけでなく、その後のケアも含めた総合的なサービスの提供を目指しており、整備工場や板金工場などを併設した大型店舗の出店に力を入れているといいます。「ガリバーは年間30万台以上の中古車売買の実績があり、IDOMの売上は5,000億円にのぼる勢いとなっています中古車売買で培った知識や経験を地域社会に還元することで、地元の皆様に頼られる、『まちのクルマ屋』を目指しています」と池ノ谷さんは話します。
今回の企業版ふるさと納税を活用した寄付に際しては、本社側で大枠をコントロールして、詳細が固まったところで各販売店が対応に当たりました。「『まちのクルマ屋』という意味では、販売店から今回のようなアイデアが出てきて、販売店が独自に取り組むというのが理想です。今回の経験を生かして、そうした機運が生まれることを望んでいます」と、新規事業開発チームの立場からの思いを話してくれました。
【画像】IDOMの本部、品川オフィス
中古車売買を軸にした新しい取り組みを模索
企業版ふるさと納税を活用したことで得た自治体とのつながりに手ごたえを感じているという池ノ谷さん。今後の寄付について思いを語ってくれました。
「今回の寄付では脱炭素にテーマを絞り、自治体の年式の古いガソリン車を入れ替えることに注力しました。ただ、今回ご縁があった自治体との対話のなかで、自動車を通した社会課題解決に大きな可能性を感じているところです」と池ノ谷さんは話します。
例えば、福祉に力を入れている自治体に福祉車両を提供する、あるいは公共交通機関の利用が不便な地域にコミュニティバスを提供するなど、ガリバーの強みを生かした社会貢献が考えられるといいます。「手探りで始めた企業版ふるさと納税でしたが、今後につながる経験をさせていただくことができました。」と力強く話してくれました。
語り手
株式会社IDOM
池ノ谷さん
会社・団体名 |
株式会社IDOM |
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