日本一のキャベツ産地・群馬県嬬恋村が挑む「Cab Tech嬬恋」
【画像】一面に広がるキャベツ畑
標高1,000m前後の高原に広がる群馬県嬬恋村は、夏秋キャベツの出荷量日本一を誇る農業の村です。しかし現在、農家の高齢化や担い手不足、さらに気候変動による品質管理の難しさといった課題に直面しています。これらの課題を先端技術で解決し、持続可能な未来型農山村モデルを築こうとする構想が「Cab Tech(キャブテック)嬬恋」構想プロジェクトです。本プロジェクトの狙いと、そこに込められた想いについて、嬬恋村未来創造課企画係長の土屋千鶴さんにお話を伺いました。
人が中心にいる温かい村をテクノロジーで支える
嬬恋村は広大な面積に集落が点在する中山間地域であり、高齢者世帯の孤立や災害時の情報共有の難しさが深刻な懸念となっています。村はこれらの懸念を「先進的な解決モデルを創るチャンス」と捉え、テクノロジーを「人のつながりを支える道具」と位置づけ、「CommunityTech(コミュニティテック)」を基盤とした共創の仕組みを構築しました。
「人口減少という現実は避けられませんが、それをただ衰退と捉えるのではなく、先端技術で解決できるチャンスだと捉え直しました。テクノロジーを主役とするのではなく、人と人との温かいつながりを下から支える存在として活用していきたいと考えています。地域の絆に技術を組み合わせることで、人が中心にいる温かい村づくりができると信じています」と土屋さんは語ります。
【画像】畑で大きく育ったキャベツ
農業生産;スマート農業による産地ブランドの価値向上
「農業生産(Agri)」「地域安全(Bosai)」「移動交通(Mobility)」の三本柱で構成された本プロジェクトの第一の柱は、基幹産業である農業のアップデートです。ドローンによる生育モニタリングやAIを用いた収穫適期判定、土壌センサーのデータ活用により、生産の効率化と省力化を目指しています。これにより「日本一のキャベツ産地」のブランド価値をさらに高めていきます。土屋さんは、スマート農業導入の意義をこう語ります。「近年は高原でも30℃を超える日 が増え、長年の経験や勘だけでは通用しない場面が出てきました。スマート農業の導入は、ブランドを守るだけではなく、少ない労力で高品質なキャベツを作れる環境の整備にもつながります。そうすることで、次世代への農業継承をよりスムーズにしていきたいと考えています」
【画像】畑の上を飛ぶドローン
地域安全:ドローンのフェーズフリー活用
第二の柱は、中山間地域特有の地形に対応したデジタル防災対策です。特に注目されている対策が、ドローンを平時と災害時で使い分ける「フェーズフリー」な運用です。日常的な農作物の管理に使うドローンをいざという時には被災状況の把握や孤立集落への物資輸送に転用し、村の安心を支えます。
「面積が広く、集落が分散しているため、災害時に誰がどこで困っているかを迅速に把握することが最優先課題です。普段はキャベツの生育状況を確認するために飛ばしているドローンを有事には災害対策用にスライドさせることで、日常の延長線上で『安心できる村づくり』を実現したいと考えています」と展望を語る土屋さん。
【画像】予約制乗り合い送迎サービス「チョイソコつまごい」の車両
移動交通:住民の声を反映する送迎サービス
第三の柱は、日常生活を支える「足」の確保です。村ではAIを活用した予約制乗り合い送迎サービス「チョイソコつまごい」を運用しており、ドアtoドアでの通院や買い物を支援しています。これは単なる自動化された送迎サービスではなく、オペレーターが住民の細かな要望を聞き取り、AIによるルート最適化に反映させる柔軟な仕組みが特徴です。
「村が広大なため、移動の自由が生活の質に直結します。例えば、仲良しグループが一緒に利用したいという要望を受け、代表者一人の電話で全員の予約が完了する仕組みを作るなど、小さな村ならではの距離感で改善を重ねてきました。現場の困りごとに合わせて技術をフィットさせていくプロセスこそが、Cab Tech嬬恋の核心です。今後はデータ分析を強化し、観光客の二次交通や子育て世代の移動支援への展開も視野に入れています」と土屋さんは人を中心に据えたサービスの魅力を語ります。
【画像】キャベツ畑と、その奥にそびえる浅間山
宝を次世代へ「渡す」ため、ともに未来を語れる仲間に
本プロジェクトへの寄付金は、センサーやドローンの導入、データ基盤の整備、そして送迎サービスの拡充に充てられます。最後に、土屋さんはプロジェクトに込めた想いをこう語りました。
「私は、村の宝であるキャベツ畑や人の温かさを次世代にただ『残す』のではなく、『渡す』という言葉を使っています。残すというと現状維持のイメージが強くなりますが、時代に合わせて変化し、アップデートしながらバトンをつないでいくことこそが大切です。企業版ふるさと納税でつながる皆様も、もう嬬恋村の仲間です。いつか一緒に、キャベツ畑の向こうにそびえる浅間山を眺めながら、この村の未来を語り合える日を心から楽しみにしています」
語り手
嬬恋村未来創造課企画係長
土屋千鶴さん
| 自治体 |
群馬県 嬬恋村 |
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