長野県須坂市の発祥フルーツ“ワッサー”をブランド化して全国へ
【画像】ワッサーは桃とネクタリンの特徴を併せもつ
長野県須坂市で生まれた奇跡のフルーツ“ワッサー”をご存知でしょうか? 見た目は桃なのに「サクサク」「カリカリ」の食感をもち、さっぱりとした甘さとほどよい酸味が特徴です。須坂市では、まだ市内を中心とした狭い地域でしか流通していないこの新しいフルーツを全国に広めようとする取り組みを進めています。ワッサーの魅力を市の担当者にお聞きしました。
偶然から生まれたフルーツ、ワッサーとは?
ワッサーが誕生したのは昭和43年(1968)のこと。「山根白桃」と「水野ネクタリン」を混植していた農園で偶然芽吹いた一株の苗木が全ての始まりでした。桃ともネクタリンとも違うその苗木を農園主の中村渡さんが大切に見守り続けたところ、やがて果実がなりました。ひと口食べてみたところ、味は桃なのに食感は桃のような柔らかさはなく「サクサク」「カリカリ」とした独特の歯ごたえだったといいます。新しい味わいに衝撃を受けた中村さんは栽培を続けました。その後、この果樹は1990年に須坂市のオリジナル品種として、正式に品種登録されました。
この果樹に名前を付けることになった中村さんは「自分のあだ名を付けたらどうか」という友人のアドバイスを受け、幼少期によばれていた自身のあだ名である「ワッサー」と命名。こうして須坂市が誇るワッサーが誕生したのです。
【画像】被災場所に植えられたワッサーの果樹園
被災地復興のシンボルとして栽培が拡大
その後、ワッサーは須坂市周辺で栽培を続けられていましたが、広範囲に流通することはありませんでした。転機となったのは、千曲川流域に大きな被害をもたらした令和元年東日本台風です。「須坂市福島地区では千曲川が増水し、畑は泥に覆われてしまいました。これを機に農業をやめようと考える農家も多く、遊休農地が増える心配がありました」と須坂市農林課の戸井田尚隆さんは話します。そのような状況のなか、地区の若手農家が中心となって「福島大島地区再生を目指す会」を立ち上げ、ワッサーを復興のシンボルとして栽培を拡大することになりました。
農業をやめる人の農地を借り受けて畑を集約化し、またスマート農業技術を導入するなど、省力化と品質向上を目指して日々栽培に取り組んでいるといいます。「被災後に植えた約200本のワッサーが、ようやく実を付け始めたところです。ブランド化を推し進めて、多くの人にワッサーの魅力を知ってもらえれば」と戸井田さんは期待を寄せます。
【画像】見た目は桃なのにサクサクの食感をもつ
引き締まった果肉が現在の気候にマッチ
「サクサク」「カリカリ」といった、従来の桃とはまったく異なる食感が魅力のワッサー。果肉は一般的な桃よりも硬く、日持ちがよいため近年の夏の猛暑にも強いという一面ももち合わせています。「ご存知のとおり、桃の旬は真夏なのですが、従来の桃は果肉が柔らかいため、猛暑時には流通ロスが大きくなることが課題となっています。その点、ワッサーの果肉は引き締まっているので、そうした心配が軽減されます。この点が市場関係者からも注目されており、販売経路拡大の好機だと考えています」と戸井田さん。
こうして須坂市では、ワッサーブランド化の取り組みが2025年度 から始まりました。
【画像】PRのために作成したワッサー型のリーフレット
桃の戦国時代到来を見越して、ワッサーの魅力を全国に発信
ブランド化推進の取り組みは、ワッサーのことを知ってもらうことから始まりました。2025年度には、関東や関西方面への流通拡大に向けて、果実の形を摸したリーフレットを作成しました。2026年度も引き続き、ワッサーを周知させるためのPR活動を続けていく予定といいます。
長野県は桃の生産量全国3位を誇りますが、4位の山形県に肉薄されており、予断が許されない状況といいます。「今後、桃の戦国時代が訪れることが予想されるなか、ワッサーは将来性のある品種として注目され始めています。ワッサーで長野県の桃を盛り上げていければ」と戸井田さんは意欲を覗かせます。
【画像】ワッサーを紹介するイベントなども開催(写真は2025年度の新潟県直江津市でのイベント時のもの)
ワッサーが食べられるのは1カ月間だけ。超レアな「奇跡の果物」をぜひ
将来的には、ワッサーの名前が全国的に認知されることが目標という戸井田さん。「欲をいえば夕張メロンなどのように、市の名前と結びつけたイメージを定着させたい。そのためにもPR活動を通して、多くの人に知っていただけるよう取り組みを進めます」と意欲を語ります。さらに「須坂市ではワッサーのブランド化プロジェクトに対し、企業版ふるさと納税を活用した寄付を募っています。市の取り組みに共感してくれる方、ご支援をお待ちしています」と続けます。
ワッサーの魅力を知るには、実際に食べていただくのが一番と話す戸井田さん。最後にメッセージをいただきました。「収穫時期は7月下旬から8月下旬にかけてのわずか1カ月間のみで、この時期には市内の直売所やスーパーなどでご購入いただけます。生産量はまだまだ少ないので、見かけたらぜひ購入していただきたい。従来の桃の常識を覆す、新しい食感を体験してみてください」
語り手
須坂市産業振興部農林課農政係担当係長
戸井田尚隆さん
| 自治体 |
長野県 須坂市 |
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