屋形船を整備して鵜飼の伝統を後世に伝えたい~愛媛県大洲市~
【画像】「大洲のうかい」。至近距離で鵜飼の様子を見られることが魅力
肱川(ひじかわ)で行われている「大洲のうかい」は、大洲市の夏の風物詩。篝火(かがりび)を灯した鵜舟と屋形船が並漕して川を下る、国内でも珍しい「合わせうかい」という手法で行われており、日本三大鵜飼のひとつにも数えられています。近年では屋形船の減少や老朽化が進んでいることから、新しい屋形船を整備するプロジェクトが進められています。市の担当者にプロジェクトの現状をお聞きしました。
日本三大鵜飼「大洲のうかい」とは
「鵜飼」とは、鵜を使って鮎を獲るというもので、『古事記』や『日本書紀』にも記述がある昔ながらの伝統漁法です。肱川でも鵜を使った漁が行われていたことが古文書に記されていますが、明治以降はその伝統が途絶えていました。昭和32年(1957)に観光事業として復活し、現在では大洲市の夏の風物詩として多くの見物客が訪れています。
大洲のうかいは「合わせうかい」とよばれる国内でも珍しい手法で行われています。屋形船が篝火を焚いた鵜船を取り囲むようにして川を下るため、鵜が魚を獲る様子を間近に見ることができます。烏帽子に腰蓑姿の鵜匠の巧みな手縄さばきや、鵜が水飛沫をあげながら魚を獲る光景は、静寂に包まれた幻想的な景観と相まって息を呑むような美しさがあります。
【画像】座敷に座るスタイルの現行の屋形船
最盛期から40隻以上も減少。新造船を投入して夏の風物詩を盛り上げる
屋形船では、川魚などを使った大洲市の伝統料理や巧みな話術で盛り上げる案内人の解説、船頭の櫓さばきなどを楽しむことができます。鵜飼とともに楽しむ約2時間、約2.7kmの川下りは人気アトラクションとして定着し、一時は60隻以上の屋形船が川面を彩っていました。しかし現在では船の老朽化が進んだこともあって15隻にまで減少し、稼働している船も頻繁に修繕しながら運航しています。
そこで今回の新造船プロジェクトが立ち上がりました。「2023年度から始まり、2027年度までに新造船5隻を投入して20隻体制にする予定です」と話すのは、大洲市商工観光課の東誠幸さん。「特に花火大会などのイベント時には船が不足するので、その解消にも期待しています。市が誇る夏の風物詩をさらに盛り上げていきたい」と続けます。
【画像】鵜飼に使われる鵜
新スタイルの屋形船。新しいニーズの開拓にも期待
新造船の設計にあたっては、新しいニーズも視野に入れたといいます。「いま稼働している屋形船は座敷スタイルですが、ご高齢の方や欧米などからのお客様が快適に体験していただけるよう、新造船にはイスとテーブルを設置します」と東さん。「古民家を活用した持続可能なまちづくりの取り組みが世界的に注目され、海外からのお客様が増えつつあります。現状では、ほとんどが台湾などアジアからのお客様ですが、今後は欧米豪のお客様など、より多くの方に来ていただき、日本の伝統漁法を体験していただきたい」と話します。
また、鵜飼だけでなく、屋形船を活用した様々な事業にも取り組む予定だといいます。「肱川の魅力発信のツールとして活用し、地域の活性化につなげていきたいです」と東さん。
【画像】鵜匠の手縄さばきに目を奪われる
目標は100年継続。大洲市の伝統文化として後世に伝えたい
大洲市には清流・肱川をはじめ、山や海の風景が広がるなど、美しい自然が残っています。また、城下町の古いまち並みや歴史的建造物も残っており、多様な文化も息づいています。市ではまち並みの保存を目的に、古民家を改修してショップやホテルとして再生させる取り組みを行っており、観光客の増加やまちの活性化につながっています。この取り組みが世界的にも高く評価され、2022年と翌2023年には「世界の持続可能な観光地TOP100選」に選出されました。また、2023年には「文化・伝統保全部門」で世界1位を獲得し、さらにシルバーアワードも受賞しました。
今回のプロジェクトも持続可能なまちづくりの一環だといいます。「鵜飼の文化は昭和32年(1957)に観光事業として復活してから2027年で70周年を迎えます。目標は100年継続。そのためには市からの補助金に頼らずに事業者が利益を出せる仕組みを構築することが必要。また、鵜匠の育成にも取り組む必要があります」と東さん。2026年度には従来のベテラン2名に加え、若い新人鵜匠もデビューします。「大洲市の伝統文化を絶やさず、しっかりと後世に伝えていきたいです」と東さんは話します。
【画像】清流・肱川のドラマチックな夕景
鵜飼はまちの発展に不可欠なコンテンツ。企業からの支援にも期待
最後に鵜飼の魅力についてお聞きしました。「大洲のうかいが開催される時期は6月から9月20日まで。夏の夜、静寂の川をゆっくりと下るので、水面を進む感覚はそれだけでも楽しいもの。また、月の光に照らされた大洲城や臥龍山荘など、幻想的な風景にも注目していただきたいです。そんななかで繰り広げられる鵜匠の巧みな手縄さばきや、鵜が魚を獲る様子を間近にご覧いただけます。ほかにはない魅力が満載なので、ぜひ一度体験していただきたいです」
近年の物価の高騰により新造船1隻あたりの予算が大幅に増加しているといい、市では広く寄付を募集しています。「大洲市が肱川と共存してきた歴史や、持続可能なまちづくりに興味がある企業の皆様には、ぜひ力をお貸しいただきたい」と東さん。「私たちと一緒に市の未来を切り開いていきませんか?」
語り手
大洲市商工観光課専門員
東誠幸さん
| 自治体 |
愛媛県 大洲市 |
|---|---|
| 資料ダウンロード | 「大洲のうかい2026」チラシ |